政府は10月1日の閣議で、2014年4月の消費税8%への引き上げを決定した。消費税率の引き上げによって、財政健全化に対する懸念の高まりとそれに伴う金利上昇という最悪のシナリオはひとまず回避されるとの見方が大勢のようだ。また、やるべきことを先送りせず、痛みを伴う決断を内外に示すことによって、アベノミクスに対する不信や懸念を払拭するというアナウンスメント効果も大きかったのではないか。

消費税率の引き上げに併せ、政府は、増税への対応策として、企業向け減税に加え、5兆円規模の経済対策を打ち出した。補正予算による経済対策は、公共投資、震災復興事業、低所得者・住宅購入者への現金給付など総額5兆円規模となる。その狙いは、言うまでもなく、家計が景気回復を実感する前に増税負担が重くのしかかり、デフレ脱却が遠のくことを回避することにある。

消費税増税への対応策のもう一つの柱は、企業向け減税である。設備投資促進のための法人税減税、賃上げ促進税制の拡充による雇用減税など総額1兆円規模となる。これに加えて、安倍首相は、復興特別法人税を1年前倒しで13年度末の廃止を検討、また、国際的に高い水準とされる法人税率の引き下げも真剣に検討することを明言している。

政府が企業向け減税を消費税増税の柱とした背景には、減税による企業の収益拡大を賃金上昇や雇用の拡大につなげ、個人消費の活性化に波及させるという狙いがある。長いデフレの間に、企業は投資や従業員への還元を行わず、内部留保という形で金を貯めこんできた。投資減税及び雇用減税を通じてこうした資金を活性化させ、経済の好循環につなげていく。こうした好循環を実現する以外に我が国経済の潜在成長力を高め国民全体の収入を引き上げる道はないという考え方に立っている。

こうした経済の好循環の実現は、そう簡単なことではない。企業収益の拡大が実現するとしても、それが給与へ反映されるためには政労使の共通理解が不可欠である。安倍首相が一過性の対策ではなく「未来への投資」であると位置づける今回の経済政策パッケージが、そうした好循環への発射台となり、アベノミクス第三の矢である成長戦略の実行・強化に速やかにつながることを期待したい。

大橋 善晃
モークワン顧問
日本証券経済研究所リサーチフェロー
日本証券アナリスト協会検定会員
(元日本証券アナリスト協会副会長)