12月13日、財務省と金融庁が事務局を務める「金融・資本市場活性化有識者会合」が「金融・資本市場活性化に向けての提言」と題する報告書を取りまとめて公表した。

同報告書は、金融・資本市場活性化に向けた金融版の成長戦略の提言であり、アベノミクス「第三の矢」の一環として、金融・資本市場においても、潜在成長力の引き上げに向けた戦略的な構造改革を進める必要があるとしたうえで、①1600兆円に迫る家計金融資産や公的年金等の資金が成長マネーに向かう循環の確立、②アジアの潜在力の発揮、地域としての市場機能の向上、我が国との一体的な向上(金融庁と関係当局間の連携強化等を通じて、アジア各国の金融インフラ整備支援、本邦企業や金融機関がアジア各国でビジネスを行っていくうえで必要な環境整備など)、③企業の競争力の強化、起業の促進、④人材育成、ビジネス環境の整備等、の4つをその柱として掲げている。

報告書は、上記の4つの分野について、それぞれ、2020年の姿を想定したうえで、一年以内に実施すべき施策と2020年までに取り組むべき施策に分けて提言しているが、注目されるのは、豊富な家計資金や公的年金等(「眠っている」とされる資金)の活用を戦略の柱の一つとして位置付けたことである。

豊富な家計資金や年金資金が成長マネーに向かう循環の確立にかかわる課題として、報告書は、家計がライフサイクル等に応じた資産形成を行える環境の整備及び市場環境・市場の魅力の向上等を掲げ、前者については、直ちに、以下の諸施策・課題に着手するよう提言している。

① 2014年1月に開始される小額投資非課税制度(NISA)の普及促進、利便性の向上
② 投資信託等における若年者から高齢者に至るまでのライフサイクルに適合した商品の開発・普及促進、販売手数料重視の営業の見直し
③ 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)等の公的・準公的資金における運用の見直し(海外年金ファンドとの共同投資、インフラファンド等への投資対象の拡大等)、リスク管理体制等ガバナンスの見直し、高度な運用やリスク管理を担う人材の確保
④ 2014年1月に算出が開始される「JPX日経インデックス400」の積極活用
⑤ より根本的な課題として、金融経済教育を通じた、初等中等教育から社会人、高齢者に至る全世代の金融リテラシーの底上げ

さらに、次の段階においては、「家計がライフサイクルを踏まえ、世代に応じた資産形成(リスクテイク)を行える環境が整備されることを目指す」(2020年の姿)ために、更なる個人の投資リテラシーの向上や投資促進策の検討、私的年金の見直し、投資信託等について、顧客の投資目的やニーズに合った商品開発・普及促進への更なる取組、銀行・証券・保険・資産運用など業界横断的な金融経済教育への取り組みの加速、一層の高度化等を強力に推進する必要があるとしている。

提言された課題は明確であり、いずれも異論ないところではあるが、2020年の姿は、最終的には個人や証券を始めとする関係会社・機関の行動が大きく変わらない限り実現できないものであり、その観点から見れば、極めてハードルの高い課題であるといわざるを得ない。万全な対策というものが存在しない以上、施策が試行錯誤的なものになるのは避けられないとしても、出来る限り実効性の高い施策の策定と官民挙げての推進を期待したい。

(注)「JPX日経インデックス400」は、東京証券取引所及び日本経済新聞社が共同で新たに開発した株価指数で、現行のTOPIXに近いものであるが、TOPIXのようにすべての銘柄を指標の対象とはせず、毎期の業績、ROE(株主資本利益率)、社外取締役の有無などの条件を満たした400社がその対象となる。この新たな指標は、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たす「投資家にとって投資魅力の高い会社」で構成することによって、日本企業の魅力を内外にアピールするとともに、その持続的な企業価値の向上を促し、株式市場の活性化を図ることを狙いとしている。

大橋 善晃
モークワン顧問
日本証券経済研究所リサーチフェロー
日本証券アナリスト協会検定会員
(元日本証券アナリスト協会副会長)