アベノミクスの滑り出しは好調だ。2%(以上)の「インフレ目標」の設定が、人々の金融引き締め懸念を減退させ、円安、株高をもたらしている。

日銀はこれまでも、銀行が保有する国債(主として短期国債)を購入することで、「ベース・マネー」と呼ばれる資金を民間銀行に提供してきた。今回のアベノミクスは、こうしたベース・マネーの供給を継続するとともに、日銀による長期国債、ETF、REIT、外債などの購入を通じて、銀行以外の資金供給チャネルに働きかけ、あわせて資産価格に影響を及ぼすことで金融政策の効果を高めようとしている。

そのため、安倍晋三政権は、日銀総裁を交代させ、日銀法の改正、場合によっては、これまで禁じ手とされてきた日銀による国債の引き受けも視野に入れながら、従来とは「次元の異なる」金融緩和を実行しようとしている。こうした政策は有効ではなく、リスクも高いとの声も多い中、安倍首相はあえて火中の栗を拾うことで、デフレ克服への不退転の決意を表明したということであろう。

こうした「次元の異なる」金融緩和が、ある程度の効果をもたらすとしても、これだけではデフレからの脱却には力不足であり、持続的に需給ギャップを埋めるための施策が不可欠である。

そのカギは、アベノミクスの「三本の矢」(金融政策、財政政策、成長戦略)のうちの第三の矢である「成長戦略」にある。アベノミクスの第二の矢は、財政政策、すなわち、公共投資による需要増加政策であるが、公共投資の内需拡大効果は限られているから、やはり成長戦略による需要増加に向けた取り組みが必要だ。

成長戦略の基軸は、規制緩和による構造改革である。規制改革によって、価格メカニズムの働く競争的市場を形成し、事業者の創意工夫を妨げる障壁を取り除くとともに、消費者の潜在的な需要を掘り起こすことができれば、日本経済の成長可能性は大きく広がる。とりわけ医療・介護・保育・農業など運営主体の参入が特定の法人に限定され、新規参入が阻害されている分野においては、規制緩和の効果は極めて大きいと考えられる。

安倍首相は、首相就任当初から、規制改革を「成長戦略の一丁目一番地」と位置づけていたが、先日来、日本再生本部において、健康・医療分野の規制改革などを指示。また、医療改革の戦略作りを主導し、業界と行政の橋渡しを担わせるため、内閣官房に「健康・医療戦略室」を設置するなど、規制改革の姿勢を鮮明にしている。

成長戦略はスクラップ&ビルドの両面を持つ。当然ながらそれは痛みを伴わざるを得ないので、その推進には強力なリーダーシップが求められる。安倍政権は、今夏の参院選をにらみ、成長戦略を打ち出す意向であると伝えられているが、そこでリーダーシップを発揮し実効性の高い施策を提示できるのかどうか、注視していく必要があろう。

大橋 善晃
モークワン顧問
日本証券経済研究所リサーチフェロー
日本証券アナリスト協会検定会員
(元日本証券アナリスト協会副会長)